7番隊隊長の部屋

今とか未来とか。日記ではない。日記はまた別にあります。

日々 10

私は考えていた。
人さらい達がここに着いた後に彼らがとる可能性が高い行動は大きく分けて3つだ。
一つ目は、金目の物の捜索を行ってから宿泊するというもの。この場合、昼のうちにわざと捕まり(そのために見つかりやすい所に隠れている)夜の間に逃げ出せばいい。
二つ目は、捜索を行わずに宿泊するというもの。同じく夜の間に子供達を逃がしてしまえば良い。
三つ目は、捜索を行った後すぐに出発してしまうというもの。これが一番面倒で、わざと捕まった後はひたすら逃げられる機会を待つしかない。

男達の声が聞こえる。声は15人分だが、足音はもっと多いようだ。どうやら子供達を働かせているらしい。時折リーダーらしき男が叫んでいる。
「良く探せよ!開かない扉は壊せ!」
「さっさと寝袋持ってこい!」
なるほど。一つ目か。
もう一度フードを深く被り直し、私は近づいて来る足音を待った。


「おい、こんな所にガキが隠れてたぞ!」
そう経たずに上から声が降ってきた。男はカウンターを回り込むと、怯えている(ふりをしている)私の顔を覗きこんだ。
「あー、こりゃあ愛玩用ならかなりの値が付きそうだ。おーい、手錠持ってこい!あ?違う違う、ロープじゃなくて!こいつぁ上玉だぜ、傷付けんな!」
ほどなくして手錠がやって来た。後ろに回した両手にかけられたそれはそれほど頑丈では無さそうだ。力をかければ切れそうだ。

案の定連れていかれたのはリーダーの男の前だった。もちろん私達が捕まった奴とは違うが、雰囲気がどことなく似ていると思うのは私の偏見だろうか。
「ほう、こりゃ確かに売れそうだ。あ、まてまて、そこ置いといてくれねえか?しばらく眺める」
(げっ……)
これは面倒だ、怯えた演技を続けなくてはいけない。気持ち悪い笑顔の男を前に、私はため息をつきたくなるのを必死に抑えていた……。