7番隊隊長の部屋

今とか未来とか。日記ではない。日記はまた別にあります。

日々 6

そのまま関わらずに一週間経ってくれれば私としては最高だったのだが、彼女たちは見た目通り世間一般的に言えばいい性格をしているらしく、案の定その日の夕食に誘われた。でもまあ、料理をしなくていいのだから断る理由もなく、今は彼女たちが使っている部屋でテーブルを囲んでいる状況である。

「お二方はなぜ旅をされているんですか?」

さすがに黙ったままというわけにもいかないので、そう切り出した。ちなみに彼女たち(料理担当は男性の方らしい)が出してくれたのは、パンと野菜のスープ、それにソースをかけた肉までついてきた。旅をしている割にはなかなか豪華な食事である。

答えたのは男性の方だった。

「俺らはまあ、旅芸人みたいなものだな。俺が楽器を演奏して、こいつが歌って踊る。すると、喜んだお客さんが色々恵んでくれるって訳だ。」

「まあ、今の時代それだけじゃ食べてけないから、行く先々で日雇いのバイトなんかもしてるんだけどね。」

「なるほど、音楽ですか…すごいですね。」

私はなぜそんなことをしているのか聞きたかったのだけど、それ以上追及するのも野暮だと思ったからやめておいた。

「あなたはここに一人で住んでるって言ってたかしら?色々と一人で大丈夫なの?」

女性の人から溢れでる母性本能が見える。あいにく間に合っております。

「はい。必要な家電とかは(何故か)揃ってますし、飲み水とか保存食料は(何故か)大量にありますし、服とかは町まで行けば買えますし…」

「あ、そうじゃなくてね、」

やっぱりか。もとよりこんな答えで満足してくれるとは思ってなかったけど………

「そんなに若いのに、こんなところに一人で寂しくない?本来なら学校に通う年齢だし、何か事情があるんでしょうけど」

ほら来た。ここに来るまでいろんな場所を転々としてきたが、どこでも必ず一回はこの手の質問をされた。正直面倒くさいし苦手だけど、答えない訳にもいかず、試行錯誤して考えだした一番の答えはこれだった。

「一人でいるのは嫌いじゃないですから……それに自分で選んだことですし、ね。」

それで何かを察したのか彼女はそれ以上追及せず、その後は他愛のない会話が続いた。

日々 5

図書館へ最初に私以外の人が来たのは、1週間くらいしてからだった。

図書室でミステリーの本を読んでいると、入り口の扉が軋む音、続いて20代前半と思われる女性の声が聞こえた。

「すみませーん、どなたかいらっしゃいますかー?」

私はその声には答えず、耳をすました。二人分の足音と男性の声が聞こえたが、武器特有の金属音は聞こえない。足音も軽いし、大きな武器は持っていないようだ。

「すみませーん、怪しい者じゃないんですー。ただちょっと泊めて頂きたいだけなんですー。」

再び女性の声が聞こえた。 この様子なら多分出ていっても大丈夫だろう。そう判断して、私は一階へ降りて行った。

「返事無いぜ。いないんじゃないのか?」

「でも電気もついてるし、誰かいると思うんだけど…」

やはり訪問者は二人だった。長い髪を後ろで縛った女性と、背の高い男性。装備から見ると、歩いて旅をしているようだ。

「あの…今この図書館に住んでいるのは私だけですが…」

二人は明らかに驚いたという顔をした。しかしさすがに慣れているのか、女性のほうが話掛けてくる。

「あたし達ね、ちょっと…そう、1週間くらいここに泊めて欲しいんだけど、いいかしら?」

「ええ、というよりここはもともと旅人のために開放されている場所ですから…」

「そう、ありがとう。じゃあ、遠慮なく泊まらせてもらおうかしら。」

日々 4

その後、ガラスケースからなんとかして中の本を取りだそうと試みたが、ただのガラスではないらしく、渾身の力をこめて自分の本で殴り付けてもヒビすらはいらなかった。この本はマシンガンで撃ち続けても平気な程丈夫だし、私だってこんな見た目でも大の男を軽く投げ飛ばす位の力はあるのだからどう考えても普通じゃないのはガラスケースの方だ。

「仕方ない、今は諦めるか…。」

図書館に住んでいればそのうち開ける方法が見つかるだろう。ここは一旦引いて、先に図書館内部の情報を把握しておこう。

私は地図を確認するため、一階へと降りていった。

***************

「図書館に来たからには、本が読みたい。」

そう思って、まず一番大きい図書室に行くことにした。

地図で調べたところ、一番大きい第一図書室は二階に登ってすぐにあるらしい。

はやる気持ちを押さえながら階段を上る。部屋の扉は開いていた。

待ちきれずに飛び込む。

「わあ…!」

今までに見たことのない量の本、本、本。

それを見て私は改めて思った。

ああ、私は本が好きなのだ、と。

それから私は、お腹がすいて集中出来なくなるまで本を読み続けた。

日々 3

木製の古びた扉に鍵はかかっておらず、力をこめると軋むような音を立てて開いた。 「うう、暗い…」 扉のすぐ横にあった照明のスイッチらしきものをカチカチしてみたが反応がない。電気は通っているという話だったがどうやらブレーカーが落ちているようだ。 「この暗いなかに入れと…?」 正直暗いところは得意ではないというか大の苦手なのだが、ここでじっとしていても明るくなる訳ではない。入ってブレーカーを探しだし、上げなければここで生活はできないのだ。 私は本を抱きしめると、足を踏み出した。 ************ 「あった…」 20分程探しまわり、館長室とおぼしきところでブレーカーを発見した。ここに至るまでにあんなことやこんなことがあったのだが恥ずかしいので割愛する。 「よいしょっと…」 ガチャン ブレーカーを上げると、部屋中の照明が一斉に灯った。シャンデリアから電気スタンドパソコンテレビ監視カメラ時計電話機その他諸々…眩しくて思わず目をかばう。 光に目が慣れてくると、部屋の一角、一ヶ所だけ薄暗くなっていることに気づいた。そのまわりだけ照明がついておらず、まわりが明るいだけに置いてあるものが暗くて見えない。 「箱…ガラスケース?」 近寄ってのぞきこむ。 そこにあったのは、 色褪せた一冊の本だった。 「Records」

日々 2

時制:過去 「図書館、ねえ…」 親切な本屋の店主に教わったとおりに北の森にやって来ると、そこには確かにあった…巨大な洋館が。 「使われなくなってから10年と経ってなさそうだけど…なんか凄いことになってるなあ…」 おそらくきちんと管理されていた頃はなかなか美しい洋館だったのだろう。が、窓に木の板が打ち付けられ、ツタのような植物が絡みついている現在の姿はお化け屋敷の看板が似合いそうな妙な貫禄を持っていた。 「…出ないよね?」 誰にともなく問いかけるがもちろん返事があるはずもなく。 とりあえず私は中に入ってみる事にした。

日々

時制:過去

※記憶シリーズの続きとして読んでください

ここはヘルンという小さな村。
空想都市ディファインに出入りする人々が中継に滞在する事で成り立っている。
ディファインの西に位置しているため、ヘルンの住人は
毎朝ディファインの隣にに朝日を拝み、何もない地平線に沈む夕日を見ている。
時々北の森にディファインから犯罪者が逃亡してくる以外は至って平和な村だった。

ヘルンに一つだけ存在する本屋。
冒険小説の世界に入り込んでいた初老の店主は、声を掛けられるまで
客が来ていた事に気付かなかった。
「あの…すみません…本を、買いたいんですが…」
「え?あ、はいはい、本ね。えっと……?!」

慌てて居住まいを正し、客に向き直った店主は仰天した。
そこには、まだ小学生くらいの子どもが店主でも読まないような
分厚い本を何冊も抱えて立っていたのである。
子どもは私物らしい一冊以外を(かなり背伸びをして)カウンターに置き、店主を見ていた。
「えっと…本当にこの本で良いのかい?結構高いけど、大丈夫?」
「あ、大丈夫です…お金、今出すので…」

そういってカバンをかき回している子どもを、店主は改めて見つめた。
明らかに大きすぎる白いパーカーを着て、同じく大きなジーンズをはいている。
パーカーのフードからのぞく顔は、男とも女ともいえない。
外に出ている部分は少ないが、肌が異常に白い。
無造作に肩までのばされた黒い髪は、先端だけインクにつけたように白くなっていた。

「…っと、これで足りますか…?」
「ん?ああ、十分だよ、ありがとう…はい、おつり。」
「ありがとうございます。…あ、あの、」
「なんだい?」
「…この辺に、人目につかずに暮らせるような所って、ありますか…?」
「…はあ?」

店主は一瞬呆気に取られ、そしてすぐに合点した。
(恐らくこの子は、ディファインで何かに巻き込まれて逃げてきたのだろう。)
(となれば、協力してやらないわけにはいかない。)
「北の森の深い所に、使われてない図書館があるよ。旅人が使うようにってガスとか水道も
 そのままだし、誰かが来ても広くて隠れる所多いから大丈夫だと思うよ?」
「…ホントですか!教えてくれてありがとうございます!」
満面の笑みでお礼を言うと、子どもは店から走り出していった。
多少ぎこちないが、見る物を不思議と惹きつける笑みだった。

寂寥

時制:現在

注:あくまでフィクションであり実際に起こったことではありません。

 

「団長の選出方法はどうする?」
「やはり選挙が一番だと思います」
「いやしかし、それでは隊長などの主要メンバーが有利になってしまうと思う」……

レギオンズΣ会議室。

ギル長がいなくなってから五日、やっと会議は軌道に乗ってきた。
たった五日でここまで持ち直したのはひとえに団員が優秀だからだろう。
少し少なくなった会議室のメンバーを見ながら、私はそんな事を考えていた。

 

五日前、ギル長が置き手紙を残していなくなり、ギルドは大混乱に陥った。

大きなギルドとはいえ、ほとんどがここ最近入ってきた新人で構成されている新興ギルドである。
まして非常に信頼が厚かったギル長であっただけに、団員が受けた衝撃は大きかった。
ただ、今までにも似たような事はあったが、今回は事情が違った。
一つ、ギル長が「もう戻らない」と明確に記した事。
一つ、今まで副ギル長のように働いていたキルまでいなくなってしまったこと。
こういう時積極的に動くべき隊長たちに、この二つの事実は重くのしかかった。
結果、大混乱である。

もし、混乱が今でも続いていたらこのギルドは崩壊していただろう。
一人一人の戦闘力が高い軍団は、統率が取れなくなれば危険な暴徒と化す。
現に、最初の一日で訓練所と食堂が半壊している。
恐ろしい事だ。
しかし、一部の冷静な団員のおかげでそれを免れることができたのは僥倖というべきだろう。

 「今日はここまでにしないか。」
そんな誰かの言葉で会議は解散になった。
依頼を受け付けてない今、行くあての無い私は自然とある方向へ足を向けた。

ギル長室である。

毎日ここを訪れるのが日課になっていたが、部屋の主がいなくなってもそれは変わらない。
変わった事と言えば、ドアを開ける時に声を掛けなくなったことくらいか。
そのかわり、もしかしたら帰ってきているのではという僅かな期待を抱きながらドアを開ける。
そこはあの日のままだった。もちろん誰も居ない。

部屋を見回して、取り留めの無い事を回想する。
ギル長が持って言ったのか、彼の物は何も残っていない。
机の上の

 

 

 

ここまで書いて止めました。

いつまでも未練を引きずって何になりましょう?

結局の所、言いたかった事は一つなわけで。

私は1人の女性として、ずっとあなたが好きでした。」

PCに詳しい方なら読み方は分かると思います。

ただそれだけです。